東京ウィンドオーケストラ 2017年1月 新宿武蔵野館にて公開

インタビュー

坂下雄一郎坂下雄一郎

■ “作家主義”を掲げる松竹ブロードキャスティングオリジナル映画製作プロジェクト。その第3弾の監督に抜擢された時の思いは?

最初に聞いた時は、まだ『滝を見にいく』の公開前で、『恋人たち』は撮影もしていなかったので、実はあまりピンときていませんでした。それが『滝を見にいく』、『恋人たち』が公開され、評判になっていくに連れて、商業映画を撮ったことのない自分にはなんだか分不相応な気がしつつ(笑)、でも期待されていることに誇らしさもありました。

■ 『東京ウィンドオーケストラ』はどういった着想から生まれた作品ですか。

写真ワークショップ経由の映画ということもあり、ある程度登場人物を多くして欲しいというリクエストがあったので、それならキリのよい10人にしようと。その時参考に観ていた映画が群像劇が多かったので、それはやめて、常に10人が一緒に行動する映画にしようと決めました。同時に、「登場人物が皆同じような衣装を着ている」というコンセプトの映画をやってみたかったことを思い出して。連想した映画が『迷子の警察音楽隊』(07/エラン・コリリン監督)です。物語は、なるべくその時置かれている状況とリンクさせたほうが良いと思っています。そこでワークショップで選ばれた俳優が商業映画に出演するという状況から着想して、「素人がプロのふりをする」という話にしました。あと当時やっていた「ピクミン®」というゲームで、主人公のキャプテン・オリマーがピクミン®を引き連れるさまが微笑ましくて、それに影響されて、主人公の樋口が楽隊を引き連れていくイメージができています。樋口は、初めは朝ドラのヒロインみたいな元気ハツラツな設定で、最初の本読みでは中西さんにもそのイメージでやってもらっていたのですが、あまりピンとこず、試行錯誤を重ねて現在のキャラクターになりました。ワークショップは辛かったです(笑)。自分が人を選抜するような立場だとは思えませんし。ただあまり卑屈になってはいけないと思ったので、誠実にワークショップに臨んだつもりです。

■ コメディを描くということについて、心掛けていたことや意識したことは?

そもそもコメディを意識して書いているつもりはないんです。楽しく書いていたら結果的にそうなっているだけで。よく「コメディが好きなんですか」と聞かれますが、暗い話が書けないんですよ。でも毎回これがベストと思って書いているのに、不評の時があって落ち込みます。ただ、脚本は直すことが一番大切な作業だと何かの本にも書いてありました。そういうことらしいです(笑)。

■ オール屋久島ロケでの撮影はいかがでしたか。

写真最後の演奏シーンではエキストラの方のご協力が不可欠でしたので、当日島中から多くの方に来ていただいて、とても嬉しかったです。撮影がちょうど梅雨の時期で、ずっと雨が降っていました。ですが屋久島が舞台の話なのに半分以上室内のシーンなので(笑)、その合間を縫って、なんとか屋外のシーンも撮影することができました。あと道路に普通に猿がいましたね(笑)。

■ 坂下監督が本作でいちばん描きたかったことは?

映画である以上、物語の終わりまでに主人公は何かしらの変化をするものと思っています。ただあまりに劇的に変化するのもなんなので、あのようなラストにしました。なるべく王道の、ありふれていて見慣れている物語を、正面からちゃんと丁寧に作ろうと決めていました。なにしろ人から依頼されて映画を撮るのは初めてなので、色々と勉強するつもりで取り組みましたね。老若男女問わないような作品になっていると思いますので、広く色んな方に見ていただきたいです。

中西美帆中西美帆

■ はじめにオファーを受けて脚本を読まれたときの感想はいかがでしたか。

樋口という主人公は、淡々とした日常の中で、このままじゃいけないという焦りを持ちつつ、でもどうすることもできないという人物で、私自身も、俳優として突き抜けられないもどかしさを抱えていた時期だったんです。だからすごく自分と重なる部分があって。あとこれまでは、わりと明るいキャラクターとか、決まったイメージの役が多かったので、今までとちょっと違った役をいただいて、今の自分が演じてみたい、自分にとってターニング・ポイントになるんじゃないかなと感じました。

■ 役作りや、現場での監督とのやり取りについてはどのように進めていったのでしょうか。

写真初めは、朝ドラヒロインのような天真爛漫なイメージもあったんです。けれど1回目の本読みの時に坂下監督から「中西さんがそれをやってもあまり面白くないし、どこにでもある作品になってしまう」と言われて。監督は初めから明確なビジョンがあるんですよね。それこそ目線ひとつに至るまで指示があって。あととにかく笑わないでくださいと(笑)。ただ私も、主演というプレッシャーもあったし、こんなに感情を表に出さない人物で、ちゃんと愛されるヒロインになれるのかなって不安もあったんです。でもこれは他の役者さんに対してもそうだと思いますが、この人がこれをやったら面白そうとか、この人が生きるなっていうのを、監督は常に考えてくださったのかなと。例えばオーケストラの人たちが持ってる楽器のバランスが、体の小さい人が大きい楽器を持っていたり、その逆だったり。セリフの間をなるべく詰めて早めに言ってください、という指示もありました。間を詰めて話すことで、樋口のオーケストラに対しての面倒臭さや、受け入れてない感じが強く出たと思うのですが、後になって、監督は映画全体のリズムを想定されていたのかなと思いました。そうやって出来上がっていったので、本当に監督と一緒に作り上げていったなって感じがします。

■ その中で中西さんから提案されたことはありましたか。

例えば松木大輔さん演じる田辺課長が控室で演奏を聞くことになった時、樋口が壁から顔を半分出して覗いているというシーン。あれは自分の中でああいう風にやってみたいと思っていて。樋口だったらこうするだろうなっていうのと、画として面白いんじゃないかなと思ってやってみたのですが、監督が松木さんの演出を先にしている間、ずっとその状態で待っていたんです(笑)。そしたらそれがOKになって、その時はすごく嬉しかったです。

■ オール屋久島ロケで印象に残っていることは?

写真とても濃い時間でした。仕事だけど修学旅行のような感覚もあって。基本は樋口と10人のオーケストラが対立する構図になっているので、監督からは「あまり仲良くならないで」と言われていたんです。けれど皆本当に仲が良くって(笑)。それはやはり皆同じ場所に寝泊まりしてのオールロケというのが大きかったと思います。でも、実は撮影中はあまり屋久島らしい場所には行けてなかったんですよ。それで後日屋久島に行ける機会があって、他のキャストの皆と縄文杉を見に行ってきました。一生に一度は縄文杉を見てみたかったので、初主演映画が屋久島が舞台で、すごくラッキーだったと思っています。

■ 記念すべき初主演となる本作。どんな方にご覧いただきたいですか?

この作品を初号試写で見た時、涙が溢れてきたんです。私自身、悩んでいた時期に出会えた作品だったので、この作品に出会えたことも、素敵なキャストやスタッフの皆との出会いも、本当に愛おしくて、宝物です。だから本当に色んな方に観てもらいたいですね。長く愛される作品になればいいなと思いますし、きっと楽しんでもらえるんじゃないかな。観てくださった方にどう感じてもらえるのか、すごく楽しみです。

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2017年1月21日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
1月14日(土)より鹿児島ガーデンズシネマ先行公開

「中西美帆  小市慢太郎 松木大輔  星野恵亮  遠藤隆太  及川莉乃  水野小論  嘉瀬興一郎 川瀬絵梨  近藤フク  松本行央  青柳信孝  武田祐一  稲葉年哉 監督・脚本:坂下雄一郎 製作:井田 寛 企画:深田誠剛 プロデューサー:松岡周作 小野仁史 撮影:横田雅則 照明:橋本次郎 録音:福田 伸 美術:寺尾 淳 スタイリスト:宮本茉莉 江頭三絵 ヘアメイク:新井はるか 編集:田中直毅 音楽:石塚 徹 小沼理裕 楽隊指導:村上信吾 助監督:栗本慎介 宣伝:アーク・フィルムズ/デジタルSKIPステーション/堀切健太 イラスト:古谷充子 協力:屋久島町 特別協賛:いわさきグループ 種子屋久高速船 製作:松竹ブロードキャスティング 制作プロダクション:ドラゴンフライエンタテインメント 配給:松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ  c 松竹ブロードキャスティング 日本/2016/ビスタ/75分/ステレオ

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